2008年7月18日金曜日

森達也、現代社会の二極化を語る

森 達也(もり たつや)
作家・映画監督
1956年広島県生まれ。
1988年オウム真理教の荒木浩を主人公とするドキュメンタリー映画「A」がベルリン国際映画祭に正式招待される。
2001年に続編「A2」が、山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞する。
主な著作に『死刑』(朝日出版社 2008)、『悪役レスラーは笑う』(岩波書店 2005)、『放送禁止歌』(光文社 2003)などがある。
(講演会パンフレットより引用)


「悪と善にすべてを分けてしまって、自分たちが善良で無垢だと思いたい。視聴者もメディアも」
ゆったりとした語り口調は、教授のような雰囲気。
社会学部学会主催の講演会「格差社会にドロップ・キック!!」で、現代社会の二極化について、森達也氏が語った。

森氏が語るには、氏は大学を卒業してから10年、今で言うフリーターをしていたという話だった。
結婚するにあたり、就職活動。
小さいころから好きだったプロレスの影響で、プロレス関係紙の記者になろうと入社試験を受けるも失敗。
TV番組制作会社に入る。
番組を制作する中で、マスメディアの世界を良く知ることになったという。

森氏は番組制作会社時代、小人(こびと)プロレスのドキュメンタリーを作とうとし、企画を持ち上げるが会社に通してもらえない。
小人プロレスとは、先天性小人症の人がプロレスをやるもの。
その当時、女子プロレスの内にあり、女子プロの試合の合間に、小人プロレスは行われていたそうだ。
女子プロはテレビで流せるが、小人プロレスは流せない。
そんな彼らを伝えたかった森氏。
番組制作会社をやめ、フジテレビに直接企画を持ち込んだところ、企画は通り、深夜ではあるが放送されたそうだ。

「小人プロレスは、非常に面白いんですよ」
彼らの生きる場としてのプロレス。
小人プロレスをやっていた人たちは、ドリフのコントにも出演していたことがあるらしいのだが、始めてから3回で終わってしまう。
原因は視聴者による抗議。
「なんであんなにかわいそうな人を出すのか」。
森氏は語る。
「善意の方が、誰かの居場所を奪ったり、社会をダメにすることがある」。

つなげて、現代社会の白と黒を明確に分けてしまう部分を指摘。
「凶悪事件が増えている、と言われているが、殺人事件は増えていないし、人口比で言うとかなり減っている。なのになぜ、危機感が高まっているのか。みんな自分が悪と無関係で、自分たちと区別したいと思っている」。

善悪がわかりやすく単純な情報が溢れているマスメディアにもふれる。
視聴率を上げるために深く考えなくてもいい情報を流すマスメディア。
視聴者も考えなくてもいい、自分にとって心地のいい情報だけを消費していく悪循環。
これらが、社会の「格差」、二極化を生んでいるという話であった。

参考
森達也公式ウェブサイト


次回は、プロレスラー望月成晃氏の話をお伝えする。


カメラ:NIKON D40
使用レンズ:70.0mm - 300.0mm (F4.5 - 5.6)
焦点距離:270.0 mm
絞り:F5.6
シャッタースピード: 1/20 秒
ISO感度:1600

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