2009年10月14日水曜日

竜王戦第一局一日目午後、封じ手をめぐる駆け引き

写真:米長邦夫永世棋聖。日本将棋連盟会長。前夜祭では仏教の教えと、将棋について語っていた。


午後の指し手の流れは、森内九段が攻め、渡辺竜王が受け流す、という展開になった。渡辺竜王が望めば、一気に終盤戦になる可能性もあったが、竜王は緩やかな流れを選択した。(詳しい指し手の解説は中継サイトをご覧ください)

さて、二日制の将棋の場合、一日目の終わりに封じ手を行う。夕方6時に手番の方が、局面が書かれた2枚の紙に、指し手を書き込み、それを翌朝開封する。

もし封じ手がなければ、手番の方は一晩中その局面で考えることができるので、その不公平感を無くすために考えられたルールなのだ。

渡辺竜王と、森内九段は、封じ手に対する考え方にかなり違いがある。「読みとイメージの将棋感」によれば、森内九段は「自分で封じると、ちゃんと書いたかどうか気になることはある」のでしてもらったほうが気楽としているのに対し、渡辺竜王は「選択肢の多い局面で封じることができれば、封じたほうが(精神的に)有利」としている。また、同様の記述が著書「頭脳勝負」にも書いてあり、「選択肢の多い局面で封じるならば、一時間は払う価値がある」と記述している。

こういう予備知識をもって、封じ手前後の指し手を見てみる。

午後5時を回って指された49手目と50手目の局面は、ともにここで封じ手でもおかしくはない、選択肢が複数ある局面だった。(少なくとも私にはそう見えた)49手目が指された段階で、おそらく渡辺が封じるだろう、と思った人も多いと思うのだが、渡辺は指した。こうして、した方が有利といっていた渡辺ではなく、してもらったほうが気楽という森内が封じ手をすることになった。このあたり、両者の駆け引きが垣間見えて、非常に面白い。

肝心の封じ手予想だが、攻撃的にいくなら▲3六歩、守備的に行くなら▲5八金が予想されている。森内九段が6時すぐに封じたとのことなので、▲5八金が自然なのかな、というのが私の見解です。

1 件のコメント:

法學徒 さんのコメント...

 何となく噺家風味だなあ・・・