2008年10月21日火曜日

見たいもの、見たくないもの 写真家大村次郷氏


10月20日、午後。
写真家の大村次郷氏が、瀬田キャンパスで講義。
国際文化学部の吉村文成教授の講義の中での、1回である。

自分は、写真は撮るが、写真家については実はあまり詳しくない。
この方も今回初めて知ったのだが、広くにはシルクロードなどの写真で知られているとか。

しかし。
講義のスライドのスクリーンに最初にうつった写真は、顔がただれた幼児。

「今日は、あえてこういった写真を見てもらおうと思います」

ベトナム戦争での枯葉剤による遺伝子異常、その影響を受けた子供たちの写真だった。
無眼症、無脳症、骨格異常…。
あまりすすんで見たくなるような写真ではない。
後半は、カンボジアの写真と、ポル・ポトについての話だった。

「こういった写真は売れない写真だ」

「ある出版社の有名な女性編集者は、全部見ようともしなかった」

と大村氏。


見たいもの、見たくないもの 地球と瀬田と
この話。
瀬田エクスプレスでも無関係ではない。

ブログをみなさんに見ていただくと、純粋に嬉しい。
ここのところのヒット数の伸びには、shu-jiも「営業の成果だ」と喜んでいる。
見ていただいているみなさんも、滋賀のキレイな写真を見ると、きっと嬉しくなると思う。

だが、しかし。
世の中、そんなにキレイなものばかりあるわけではなく。
ときにガッカリしたり、憤りを覚えるものも、当然ある。

でも、そんな写真をブログに載せ、語ったとしても、きっとそんなに楽しいものではない。
忙しい毎日の、ちょっとの時間。
ブログを見るなら、キレイなものを見て、楽しくなりたい。
それが普通だ。

撮って載せる側にとってもそうで、
「キレイ!」
「すごいじゃんあの風景!」
などど、言ってもらえる方が嬉しいから、そういった傾向の写真が多くなる。
さらに、写真は見てキレイなように現像する。
当然、アクセスも、写真がキレイでわかりやすかった方が伸びる。
これで瀬田の美人女子大生特集なんか始めたら、ヒット数はうなぎのぼりだろう。

だが、そうしていった場合、見る側も見せる側も、見たくないものから遠ざかってしまう可能性があるのではないか。

大村氏の話は、そんな最近の自分の疑問と、重なる部分があった。
テレビのバラエティー番組と視聴率について考えるときも、似たような問題がある。
ワイドショーやスポーツ新聞が下世話な話題を取り上げやすいのも、似ているかもしれない。
インターネットは、人々を、より自分の見たいものしか見ないようにする可能性は無いか…。


シルクロードのような、売れる写真で稼ぐ。
そして、こういった売れない写真、しかし残さないといけない、と感じるものについて撮っている。
そんな現実的な話も、大村氏からあった。

地球スケールのジャーナリズムも、瀬田発の弱小写真ブログも、悩みの根っこは同じところからきているのかもしれない。


というわけで、今日の写真は、瀬田キャンパスの「見たくないもの」にしておいた。

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